BL式スモビジ起業メソッド|スモールビジネスの始め方から出口まで
Biz libraryの海保です。
これまで20近くのスモールビジネス経営に関わってきた私の経験と、Biz libraryがインタビューしてきたのべ100人の経営者から得た生の情報。その両方を統合して生まれたのが、この「BL式スモビジ起業メソッド」です。
この記事では、あなたが失敗なくスモールビジネスを立ち上げ、伸ばし、その先の展開にたどり着くまでの道筋を1本にまとめました。言い換えれば「スモールビジネスの一生」を網羅的にお伝えするものです。
「これから起業を考えている」という方は、ぜひ順番通りに読んでみてほしい。「すでに経営しているが課題がある」という方は、目次から気になるところに飛んでもらっても構いません。
あなたが失敗なくスモールビジネスを立ち上げ、運営し、より幸福な仕事人生を歩むことに寄与できたら幸いです。
目次
探索フェーズ
1. 時間と生活費を確保する
スモールビジネスを始めるにあたって、最初にクリアすべきことがあります。時間と生活費の確保です。もしこれができていないなら、他のすべてに先んじてここから取り組んでください。
どうしても時間は必要です。最低でも週に8時間は使える状態を作ってください。会社員の方であれば、退職する必要はありません。夜や週末を使ってスタートすればOKです。
そしてもうひとつ、生活費に不安がある状態もよくありません。お金の心配があると焦りが生まれ、焦りはミスを呼びます。まずは「当面は食っていける」という安心感を確保してから、事業に取りかかりましょう。
2. 自分の強みを棚卸しする
残念ながら「誰でも儲かるスモールビジネス」というものはさすがに存在しません。だからこそ、あなた自身の強みに紐づけて事業を選ぶべきです。
ここで言う「強み」とは、知識、特性、繋がり、興味の4つです。これらをできるだけたくさん書き出してみてください。「お金に繋がりそうかどうか」は一旦考えなくて大丈夫です。
知識とは、あなたがよく知っていること、詳しいこと、できること(いわゆるスキルを含む)です。
- プログラミングができる
- Webデザインができる
- 電気工事ができる
- 飲食店開業の流れを知っている
- サッカーが上手い
- 英語が話せる
- 建設業界に詳しい
- クラウドファンディングに詳しい
- VTuberに詳しい
特性とは、あなたの人としての性質です。ポジティブなもの、人に褒められたことがある要素を挙げてみましょう。
- 長時間黙々とパソコンに向かっていられる
- 人に何かを説明するのが上手い
- 誰とでも初対面で仲良くなれる
- 体力がある
- 斬新なアイデアを出すのが得意
繋がりとは、あなたが持っている人的ネットワークです。どんな知り合いが多いかを整理してみてください。
- 高学歴の友人が多い
- 元リクルート社員の繋がりが多い
- マレーシア在住の友人がたくさんいる
- ボードゲーム好き仲間が多い
- RADWIMPSファンとたくさん繋がっている
興味とは、あなたが持っている「こうなりたい」「こう働きたい」という願望です。
- 英語が話せるようになりたい
- 自宅から一歩も出ずに働きたい
- 目立ちたい
- サッカーに関わりたい
- とにかく最速で1億円貯めたい
Biz libraryでは、このような作業をみんなで集中して実行するワークショップを定期的に開催しています。ぜひサブスク会員になってご参加ください!
Biz libraryサブスク会員詳細ページ
3. 取り組む事業アイデアを絞り込む
いよいよ、具体的なビジネスを選ぶ段階です。
ここからご紹介するのは、私の経験とBiz libraryのインタビューの結晶とも言える**「鉄板スモールビジネス13選」**です。まずはこの13種類のビジネスを一通り見てください。その後で、これらのどれかとあなたの「強み」を掛け合わせて、ビジネスのアイデアを考えていきます。
なお、この13選は完全にパキッと分かれているわけではなく、実際には複数にまたがっている事業も存在します。あくまで思考を整理するための分類だと考えてください。
ちなみに、それぞれの「例」に書いてあるビジネスは私の妄想ではありません。すべて私自身、私の知人、またはBiz libraryで取材した方が実際に取り組んでいる、実在するスモールビジネスです。
① メディア運営
テキスト、音声、映像などを発信することで視聴者(ファン)を集め、広告やファンクラブなどでマネタイズするビジネスです。
- 高齢者層に特化して歴史や時事問題を解説するYouTubeチャンネル
- 複数の転職エージェントを比較・紹介するアフィリエイトメディア
- シャンプー領域に絞り込み専門性の高い情報を発信するWebメディア
② コンテンツ販売
テキスト、音声、映像などで有益な情報や魅力的なコンテンツを制作し、それを直接販売するビジネスです。買い切り型も月額課金型もあります。
- 経営者にインタビューした記事を単発およびサブスクで販売(Biz library)
- 自身のWebマーケティングの知見を、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」で講座として販売
- シナリオにこだわったアダルト音声コンテンツの制作・販売
③ EC・D2C
オリジナル商品を作ってインターネット経由で販売する、あるいは既存商品を転売するビジネスです。
- トレーディングカード関連グッズの企画・販売
- Instagramを活用し、注文後に海外から仕入れる無在庫モデルでの子供服D2C
- 海外ブランドの日本における独占販売代理権を獲得し、クラウドファンディングやECサイトで販売
④ マーケティング支援
他社の集客やプロモーションを支援するビジネスです。月額制や成果報酬などの課金モデルがあります。
- TikTokに特化した広告代理店
- LINE公式アカウントの効果を最大化するための、運用代行やLP制作を含む統合的なWebマーケティング支援
- 大手企業出身の繋がりを活かした、優秀な副業人材によるBtoBマーケティング支援
⑤ BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
企業の特定の業務プロセスをまるごと巻き取るビジネスです。月額制や従量課金が一般的です。
- クライアント企業のYouTubeチャンネルを、企画から撮影、編集、運用まで丸ごと代行するサービス
- スタートアップ企業などを対象とした、経理や労務などのバックオフィス業務代行
- ホテルや民泊施設に特化した専門清掃サービス
⑥ 営業代行
他社の営業活動をかわりに実行するビジネスです。作業量に伴う従量課金や、成果報酬で課金するモデルが多いです。
- 初期費用・月額費用ゼロの成果報酬型フォーム営業代行
- コンサルティング業界に特化したBtoBのテレアポ集団
- 高単価なBtoCスクール専門の営業代行
⑦ コンサルティング
自分たちの専門知識やビジネス経験を他社に提供するビジネスです。月額制やプロジェクト単位での見積もりが一般的です。
- 介護・医療領域に特化し、採用支援から離職防止までを担う「社外人事」としての採用コンサルティング
- EC・D2C領域特化の集客の仕組み構築コンサルティング
- 民間企業が官公庁案件を獲得するための営業支援とコンサルティング
⑧ 受託開発
他社の依頼を受けて、システムやソフトウェアを開発して納品するビジネスです。開発費に加えて納品後に月額管理費を取ることも多いです。
- Web3関連の案件を中心に手がけるシステム受託開発
- ノーコードツールを用い、非エンジニアでも迅速にサービスを立ち上げられることを強みとした受託開発
- 新規事業立ち上げに特化したアジャイル開発チーム
⑨ マイクロSaaS
特定の業界や業種の、ニッチなニーズを満たすSaaSを作って利用権を販売するビジネスです。月額利用料が基本ですが、従量課金を組み合わせることもあります。
- 民泊事業者向けサイトコントローラー(予約管理システム)
- BtoB新規営業のためのAI活用コールドメール送信ツール
- 小規模店舗の雰囲気に合わせたBGMを提供するサブスクリプションアプリ
⑩ 人材サービス
企業と人の間に立ち、マッチングするビジネスです。転職エージェントとして採用決定時に成果報酬を得るモデルが一般的ですが、採用コンサルティングや人材派遣など隣接領域も広いです。
- 年収200万円台の若手層など、ローレイヤーの転職支援に特化した転職エージェント
- 日本国内にいる外国人エンジニアと、彼らを採用したいスタートアップ企業とを繋ぐ人材紹介
- PM(プロジェクトマネージャー)を抱え、企業のシステム開発プロジェクトを支援する事業
⑪ 教育・スクール
人に何かを教えるビジネスです。個人に教えるならBtoC、企業研修ならBtoBになります。
- 自身の生成AIの知識を活かした、実践的なスキル養成スクールと法人向け研修
- 趣味の「金継ぎ」をテーマに、修理サービスから始め教室運営へと展開
- 研究者向けに論文執筆や学会発表を指導するオンラインセミナー運営
⑫ M&A周辺
M&A(企業買収)に関わる事業です。1件の取引額が大きいため、周辺事業も単価が大きくなりやすい領域です。
- スタートアップ業界の繋がりを活かした、M&A仲介サービス
- 後継者のいない優良な中小企業を個人が買収し、経営を引き継ぐ「サーチファンド」モデルの実行支援
- 地域に根ざした小規模企業の事業承継に特化した、M&Aアドバイザリーサービス
⑬ 初期費用の少ない店舗・施設運営
店舗ビジネスは家賃やスタッフ人件費がかかるため比較的難易度が高いですが、初期費用を抑えてリスクをコントロールする選択肢も存在します。
- 民泊を前提とした自宅を建設し、住宅ローンを民泊収入で賄いながら副業としてスタートした民泊運営
- デリバリー専門とすることで、店舗の立地や内装コストを大幅に削減したゴーストレストラン運営
- 撮影スタジオや会議室、パーティースペースとして使える、時間貸しのレンタルスペース運営
13選とあなたの「強み」を掛け合わせる
以上が鉄板スモールビジネス13選です。
ここからは、これらの13種類と、先ほど書き出したあなたの「強み」を交互に見ながら、「こういうのはどうだろう?」とアイデアをいくつか考えてみてください。
この段階では「【ターゲット層】に対して、【サービス内容】を提供する」という形で整理するのがおすすめです。まだ自信がなくても構いませんし、価格設定や営業手法といった詳細を詰める必要もありません。
たとえば、こんな感じです。
- 「知識:YouTube運営に詳しい」×「繋がり:飲食業界の知り合いが多い」×「マーケティング支援・BPO」 → 【飲食業界でYouTubeをやりたい人や企業】に対して、【企画・撮影・編集・投稿・分析まで一通りやりますよ】を提供する
- 「知識:最新のAIを使った開発ができる」×「特性:人に分かりやすく説明するのが得意」×「教育・スクール」 → 【非エンジニアのビジネスパーソン】に対して、【AIを駆使した開発を短期集中で覚えるスクール】を提供する
- 「知識:英語が話せる」×「興味:たくさんの外国人と友達になりたい」×「人材サービス」 → 【日本で働きたい外国人】に対して、【外国人を採用したい日本企業とのマッチング】を提供する
より多くの事例を知りたければ、Biz libraryの過去記事をタグで辿るのがオススメです。例えば「スクール」タグを見れば、教育関連の事業を実際にやった経営者のインタビューが一覧表示されます。サブスク会員になってすべて読んでください。
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4. すでに儲かっている企業を調べる
「これはどうかな?」と思えるアイデアが出てきたら、次は「先行者調査」に進みましょう。
先行者とは、あなたが今考えているビジネスに似たことをすでにやっている人や企業のことです。まずはそういった企業の存在を見つけるところから始めます。
先行者がいない場合は要注意
もし先行者が全く見つからない場合、そのビジネスはニーズがない可能性が非常に高いです。別のアイデアを考えましょう。
スタートアップ起業なら「今誰もやっていないこと」に挑戦する価値がありますが、スモールビジネス起業は違います。「誰かがやっていて、儲かることが証明されていること」こそ選択すべきなのです。
先行者が儲かっているかを調べる
先行者を見つけたら、その企業が儲かっているのかを調べましょう。先行者がいるのに儲かっていなさそうな場合は、あなたも儲からない可能性が高いです。この段階では差別化を考える必要はありません。素直に別のアイデアに切り替えましょう。
「誰に、何を、どうやって、いくらで」を明らかにする
儲かっている先行者がいたら、その企業が「誰に、何を、どうやって、いくらで売っているのか」を徹底的に調べましょう。
調査方法はたくさんあります。以下のような手段を縦横無尽に使ってください。
- Google検索やAIでリサーチする
- 書籍を読む
- SNSを調べる
- クラウドソーシングで探す
- 商品サイトやコーポレートサイトを見る
- 決算資料を見る
- バフェットコードを見る
- Wikipediaを見る
- 商工リサーチや帝国データバンクを使う
- 業界レポートや専門誌を見る
- 知人に聞く
- スポットコンサルを受ける
- 実際に商品を購入する
- 興味があるフリをして営業を受けてみる
- レビューを見る
先行者が見つかり、儲かっていることがわかり、「誰に、何を、どうやって、いくらで売っているのか」も掴めたら――おめでとうございます。その事業は、次のフェーズに進むだけの価値があります。
もしここまでのどこかで行き詰まってしまったら、納得のいく段階まで戻ってやり直しましょう。本気で調査をしたなら、あなたには新たな「知識」や「繋がり」が増えているかもしれません。それを活かして、もう一度アイデアを練り直せばいいのです。
販売フェーズ
1. ターゲットと商談する
あなたはすでに「誰に、何を、どうやって、いくらで売るべきか」を知っています。では、実際に売ってみましょう。
ここで大事なのは、商品やサービスを作る前に売るということです。
まずは、儲かっている先行者と同じようなターゲットと商談をしましょう。商談とは、対面やオンライン会議で、相手の今の課題や悩み、過去の購買行動についてヒアリングした上で、「私はこういうものを○○円で提供できますが、買いませんか?」と打診する活動のことです。
大抵の場合、最初から顧客リストがあるわけではないので、ターゲットに出会うこと自体があの手この手でがんばるしかない部分ではあります。
なぜ「作る前に売る」のか。それは、この段階でも予想外にうまくいかなかったり、ターゲットから思わぬ反応や要望をもらったりすることがあるからです。それらの声を取り入れながら、サービス内容も売り方も柔軟に変化させていきます。そうやって、ビジネスの形を実戦の中で磨いていくのです。
最初は信頼も実績もないので、苦労するはずです。それでも売る努力を続けましょう。やっていくうちに「この点は評価されるぞ」「この機能は興味なさそうだな」「こういう人は反応がいいな」といった学びが蓄積されていきます。PDCAを回しながら、売れるまでがんばりましょう。
2. 売る→全力で価値提供→大満足を勝ち取る
1件でも売れたら、次にやるべきことはひとつです。全力で価値提供することです。
割に合わなくても構いません。とにかくお客さんに「買ってよかった!」と心から思わせるのです。相手の期待を遥かに超えるつもりで取り組んでください。
そしてその調子で2件目にも3件目にも、採算度外視で尽くしましょう。サービスを提供する中で学べることはたくさんありますし、大満足してもらうことで、これからの営業がぐっと楽になります。
大満足してもらえた顧客には、こう聞いてみてください。
「○○さんのまわりに、我々がお力になれそうな会社さんはおりませんか?」
そうやって紹介をもらい、顧客を広げていくのです。
3. 法人設立を検討する
ここまで来て、ようやく法人設立を検討しても良い段階です。
ただし注意点があります。特別な理由がないのに豪華なオフィスを借りたり、正社員を雇ったりするのは禁物です。スモールビジネス経営において、固定費は少ないほど正義だと思ってください。
もし人手が足りないと感じるなら、業務委託契約で副業人材を受け入れましょう。月5万円でも、あなたの雑務を巻き取ってもらうだけで、かなり楽になるはずです。
仕組み化フェーズ
1. 提供の仕組み化を進める
数社、数人のお客さんに大満足を提供できたら、並行して仕組み化を進めていきましょう。仕組み化を進めることで、売上も利益率も向上させていくことができます。
まずは「提供の仕組み化」からです。これまでにお客さんに価値提供をしてきた中で、「この作業は毎回やってるな」「この文面は使い回せるな」という部分がたくさんあるはずです。そういうところから手を付けていきます。
仕組み化の最初の一歩は**「マニュアル化」**です。マニュアル化のメリットは絶大で、大きく4つあります。
まず、当然ながら作業のミスが減ります。そして地味に大きいのが、「これどうやるんだっけ?」「この情報どこにあるんだっけ?」という無駄な思考をしなくて済むようになることです。さらに「この作業、そろそろ誰かにやってもらいたいな」と思った時は、そのマニュアルを渡すだけでOKです。業務改善を考える時も、マニュアルがあるおかげでルーティンワークが可視化されているのでやりやすいです。
やれることはマニュアル化だけではありません。自動化、簡略化、外注化、流用、統合など、ルーティン作業はどんどん仕組みにしていきましょう。
2. 売れる仕組み化を進める
提供の仕組み化が進んできたら、あなたは案件を効率的に対応できるようになってきているはずです。次は案件(顧客)を増やす仕組みも作っていきましょう。
これにも無限の手段がありますが、例えば以下のようなものが考えられます。
リファラル(紹介)の仕組み化。 BtoBであれば「納品後のミーティングで紹介の依頼をする」、BtoCであれば「友人紹介クーポンを提供する」など、お客さんが別のお客さんを呼ぶ仕組みを作ります。
SNSなどでの発信。 顧客層が見ているSNSを選んで、価値ある情報を発信することで新たなお客さん候補に出会う仕組みを作ります。
セミナーの定期開催。 顧客層が興味を持ちそうなテーマでセミナーを開催し、見込み顧客と接点を作ります。
展開フェーズ
仕組み化が進み、あなたのビジネスが安定的に利益を出せるようになったら、次は「その先」を考えるタイミングです。ここには3つのルートがあります。どれが正解ということはなく、あなたの価値観に最も合うものを選んでください。
ルートA:ビッグビジネスを目指す
今の事業に情熱があり「まだまだこんなもんじゃない」と思えるなら、この道です。スモールビジネスで築いた仕組みを、より大きなスケールで回す挑戦です。
やることは明確です。前のフェーズで作った「提供の仕組み」と「売れる仕組み」を、さらに高い次元に押し上げ続けます。既存商材のアップセル商品を開発します。新たなターゲット層に舵を切ります。隣接領域で新規事業を始めます。
優秀な人材の採用が必要になるでしょう。オフィスも拡張するかもしれません。固定費は上がりますが、それは新たな景色を見るためのリスクテイクです。
その先には、上場、企業価値100億円超え、スモールビジネスの枠を超えた世界があります。
ただし注意点があります。ビッグビジネスを目指すとしても、根本は変わりません。顧客に価値提供して大満足を勝ち取り、それを広げます。やることはそれをより大きな単位でやるだけです。フォームを崩しすぎないようにしましょう。
ルートB:業務から離れる
「事業は持ち続けたいけど、もっと楽になりたい」と感じるなら、この道です。仕組み化をさらに徹底し、あなたがいなくても事業が回る状態を目指します。
まず、自分が今何に時間を使っているかをリストアップします。「これは本当に自分でなければできないか?」と一つずつ問いかけます。自動化できるものは徹底的に自動化します。それ以外はマニュアルを磨き、信頼できるメンバーに完全委任します。
最終ゴールは、あなたが不在でも事業が成長し続ける自律的な組織です。メンバー自身がマニュアルを改善し、新たな挑戦を始めるような状態です。
その先に手に入るのは、時間の自由です。世界中を旅しながら月1回だけ会議に出る。諦めていた趣味に没頭する。あるいは、新しいスモールビジネスをゼロから立ち上げる。「やっぱり戻りたい」と思ったらいつでも戻れますし、その1年後に「やっぱりビッグビジネスを目指す」と言う自由もあります。
注意点もあります。自分の稼働を減らしたら売上が落ちた、というのは仕組み化が不完全なサインです。その場合はもう一度現場に戻り、自分の「暗黙知」をマニュアルに落とし込むところからやり直しましょう。また、お金の管理を一人に丸投げしないことです。不正などのリスクがあります。
ルートC:会社を売却する
一度「利益確定」して、まとまった資産を手に新たな人生を始めたいなら、この道です。特に「利益率が高い」「仕組み化されている」「少人数で回る」ビジネスは、買い手にとって非常に魅力的です。
まず売却条件を整理します。売却額の相場は年間営業利益の2〜5倍が目安です。事業譲渡というやり方もありますが、特に理由がなければ税制面で有利な株式譲渡がおすすめです。
買い手を探す方法としては、知人経営者に直接アプローチしてもいいですし、M&Aクラウド、バトンズ、M&A総合研究所などの仲介会社に複数登録するのが定石です。
交渉では買収価格だけでなく、ロックアップ期間(あなたがいつまで事業に関与するか)、その間の報酬、責任範囲なども詰めることになります。M&A経験のある先輩経営者のアドバイスを参考にするとトラブルになりにくいです。
売却が完了すると、口座にはこれまで見たことのない額のキャッシュが入ります。ロックアップ期間中は買収先の大きなリソースを使って事業を伸ばす経験が積めますし、終了後は完全に自由です。個人的にオススメしたいのは「これまでの経験を書籍にまとめて出版する」という選択です。あなたの実体験は、後輩経営者にとって間違いなく参考になるはずです。
注意点として、M&A交渉は長く精神を消耗します。疲れて本来の価値より安く売ってしまうケースがあります。提示額に疑問を感じたら焦らないことです。複数の仲介会社に相談し、客観的な市場価値を把握しましょう。属人性を減らし、財務をきれいにしておくことも売却の前提条件です。
おわりに
ここまで読んでくださった方は、スモールビジネスの「全体像」がかなり掴めたはずです。
ただ、やり方を知っただけでは実行できるとは限りません。
「自分の場合、どんなビジネスが合うのか」「実際にやった人はどんな壁にぶつかったのか」「最初の一歩は具体的に何をすればいいのか」
こうした問いに答えてくれるのは、実際にやった人のリアルな事例だけです。
Biz libraryでは、スモールビジネスを実践している経営者へのインタビュー記事を毎月7本公開しています。売上規模、業種、始め方、つまずいたポイントまで、すべて具体的に聞いています。
さらに、同じ志を持つ仲間と繋がれるイベントや、実行を後押しするワークショップも用意しています。
気になった方は、一度中を見てみてください。
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Biz libraryの海保です。
これまで20近くのスモールビジネス経営に関わってきた私の経験と、Biz libraryがインタビューしてきたのべ100人の経営者から得た生の情報。その両方を統合して生まれたのが、この「BL式スモビジ起業メソッド」です。
この記事では、あなたが失敗なくスモールビジネスを立ち上げ、伸ばし、その先の展開にたどり着くまでの道筋を1本にまとめました。言い換えれば「スモールビジネスの一生」を網羅的にお伝えするものです。
「これから起業を考えている」という方は、ぜひ順番通りに読んでみてほしい。「すでに経営しているが課題がある」という方は、目次から気になるところに飛んでもらっても構いません。
あなたが失敗なくスモールビジネスを立ち上げ、運営し、より幸福な仕事人生を歩むことに寄与できたら幸いです。
目次
探索フェーズ
1. 時間と生活費を確保する
スモールビジネスを始めるにあたって、最初にクリアすべきことがあります。時間と生活費の確保です。もしこれができていないなら、他のすべてに先んじてここから取り組んでください。
どうしても時間は必要です。最低でも週に8時間は使える状態を作ってください。会社員の方であれば、退職する必要はありません。夜や週末を使ってスタートすればOKです。
そしてもうひとつ、生活費に不安がある状態もよくありません。お金の心配があると焦りが生まれ、焦りはミスを呼びます。まずは「当面は食っていける」という安心感を確保してから、事業に取りかかりましょう。
2. 自分の強みを棚卸しする
残念ながら「誰でも儲かるスモールビジネス」というものはさすがに存在しません。だからこそ、あなた自身の強みに紐づけて事業を選ぶべきです。
ここで言う「強み」とは、知識、特性、繋がり、興味の4つです。これらをできるだけたくさん書き出してみてください。「お金に繋がりそうかどうか」は一旦考えなくて大丈夫です。
知識とは、あなたがよく知っていること、詳しいこと、できること(いわゆるスキルを含む)です。
- プログラミングができる
- Webデザインができる
- 電気工事ができる
- 飲食店開業の流れを知っている
- サッカーが上手い
- 英語が話せる
- 建設業界に詳しい
- クラウドファンディングに詳しい
- VTuberに詳しい
特性とは、あなたの人としての性質です。ポジティブなもの、人に褒められたことがある要素を挙げてみましょう。
- 長時間黙々とパソコンに向かっていられる
- 人に何かを説明するのが上手い
- 誰とでも初対面で仲良くなれる
- 体力がある
- 斬新なアイデアを出すのが得意
繋がりとは、あなたが持っている人的ネットワークです。どんな知り合いが多いかを整理してみてください。
- 高学歴の友人が多い
- 元リクルート社員の繋がりが多い
- マレーシア在住の友人がたくさんいる
- ボードゲーム好き仲間が多い
- RADWIMPSファンとたくさん繋がっている
興味とは、あなたが持っている「こうなりたい」「こう働きたい」という願望です。
- 英語が話せるようになりたい
- 自宅から一歩も出ずに働きたい
- 目立ちたい
- サッカーに関わりたい
- とにかく最速で1億円貯めたい
| Biz libraryでは、このような作業をみんなで集中して実行するワークショップを定期的に開催しています。ぜひサブスク会員になってご参加ください! Biz libraryサブスク会員詳細ページ |
3. 取り組む事業アイデアを絞り込む
いよいよ、具体的なビジネスを選ぶ段階です。
ここからご紹介するのは、私の経験とBiz libraryのインタビューの結晶とも言える**「鉄板スモールビジネス13選」**です。まずはこの13種類のビジネスを一通り見てください。その後で、これらのどれかとあなたの「強み」を掛け合わせて、ビジネスのアイデアを考えていきます。
なお、この13選は完全にパキッと分かれているわけではなく、実際には複数にまたがっている事業も存在します。あくまで思考を整理するための分類だと考えてください。
ちなみに、それぞれの「例」に書いてあるビジネスは私の妄想ではありません。すべて私自身、私の知人、またはBiz libraryで取材した方が実際に取り組んでいる、実在するスモールビジネスです。
① メディア運営
テキスト、音声、映像などを発信することで視聴者(ファン)を集め、広告やファンクラブなどでマネタイズするビジネスです。
- 高齢者層に特化して歴史や時事問題を解説するYouTubeチャンネル
- 複数の転職エージェントを比較・紹介するアフィリエイトメディア
- シャンプー領域に絞り込み専門性の高い情報を発信するWebメディア
② コンテンツ販売
テキスト、音声、映像などで有益な情報や魅力的なコンテンツを制作し、それを直接販売するビジネスです。買い切り型も月額課金型もあります。
- 経営者にインタビューした記事を単発およびサブスクで販売(Biz library)
- 自身のWebマーケティングの知見を、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」で講座として販売
- シナリオにこだわったアダルト音声コンテンツの制作・販売
③ EC・D2C
オリジナル商品を作ってインターネット経由で販売する、あるいは既存商品を転売するビジネスです。
- トレーディングカード関連グッズの企画・販売
- Instagramを活用し、注文後に海外から仕入れる無在庫モデルでの子供服D2C
- 海外ブランドの日本における独占販売代理権を獲得し、クラウドファンディングやECサイトで販売
④ マーケティング支援
他社の集客やプロモーションを支援するビジネスです。月額制や成果報酬などの課金モデルがあります。
- TikTokに特化した広告代理店
- LINE公式アカウントの効果を最大化するための、運用代行やLP制作を含む統合的なWebマーケティング支援
- 大手企業出身の繋がりを活かした、優秀な副業人材によるBtoBマーケティング支援
⑤ BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
企業の特定の業務プロセスをまるごと巻き取るビジネスです。月額制や従量課金が一般的です。
- クライアント企業のYouTubeチャンネルを、企画から撮影、編集、運用まで丸ごと代行するサービス
- スタートアップ企業などを対象とした、経理や労務などのバックオフィス業務代行
- ホテルや民泊施設に特化した専門清掃サービス
⑥ 営業代行
他社の営業活動をかわりに実行するビジネスです。作業量に伴う従量課金や、成果報酬で課金するモデルが多いです。
- 初期費用・月額費用ゼロの成果報酬型フォーム営業代行
- コンサルティング業界に特化したBtoBのテレアポ集団
- 高単価なBtoCスクール専門の営業代行
⑦ コンサルティング
自分たちの専門知識やビジネス経験を他社に提供するビジネスです。月額制やプロジェクト単位での見積もりが一般的です。
- 介護・医療領域に特化し、採用支援から離職防止までを担う「社外人事」としての採用コンサルティング
- EC・D2C領域特化の集客の仕組み構築コンサルティング
- 民間企業が官公庁案件を獲得するための営業支援とコンサルティング
⑧ 受託開発
他社の依頼を受けて、システムやソフトウェアを開発して納品するビジネスです。開発費に加えて納品後に月額管理費を取ることも多いです。
- Web3関連の案件を中心に手がけるシステム受託開発
- ノーコードツールを用い、非エンジニアでも迅速にサービスを立ち上げられることを強みとした受託開発
- 新規事業立ち上げに特化したアジャイル開発チーム
⑨ マイクロSaaS
特定の業界や業種の、ニッチなニーズを満たすSaaSを作って利用権を販売するビジネスです。月額利用料が基本ですが、従量課金を組み合わせることもあります。
- 民泊事業者向けサイトコントローラー(予約管理システム)
- BtoB新規営業のためのAI活用コールドメール送信ツール
- 小規模店舗の雰囲気に合わせたBGMを提供するサブスクリプションアプリ
⑩ 人材サービス
企業と人の間に立ち、マッチングするビジネスです。転職エージェントとして採用決定時に成果報酬を得るモデルが一般的ですが、採用コンサルティングや人材派遣など隣接領域も広いです。
- 年収200万円台の若手層など、ローレイヤーの転職支援に特化した転職エージェント
- 日本国内にいる外国人エンジニアと、彼らを採用したいスタートアップ企業とを繋ぐ人材紹介
- PM(プロジェクトマネージャー)を抱え、企業のシステム開発プロジェクトを支援する事業
⑪ 教育・スクール
人に何かを教えるビジネスです。個人に教えるならBtoC、企業研修ならBtoBになります。
- 自身の生成AIの知識を活かした、実践的なスキル養成スクールと法人向け研修
- 趣味の「金継ぎ」をテーマに、修理サービスから始め教室運営へと展開
- 研究者向けに論文執筆や学会発表を指導するオンラインセミナー運営
⑫ M&A周辺
M&A(企業買収)に関わる事業です。1件の取引額が大きいため、周辺事業も単価が大きくなりやすい領域です。
- スタートアップ業界の繋がりを活かした、M&A仲介サービス
- 後継者のいない優良な中小企業を個人が買収し、経営を引き継ぐ「サーチファンド」モデルの実行支援
- 地域に根ざした小規模企業の事業承継に特化した、M&Aアドバイザリーサービス
⑬ 初期費用の少ない店舗・施設運営
店舗ビジネスは家賃やスタッフ人件費がかかるため比較的難易度が高いですが、初期費用を抑えてリスクをコントロールする選択肢も存在します。
- 民泊を前提とした自宅を建設し、住宅ローンを民泊収入で賄いながら副業としてスタートした民泊運営
- デリバリー専門とすることで、店舗の立地や内装コストを大幅に削減したゴーストレストラン運営
- 撮影スタジオや会議室、パーティースペースとして使える、時間貸しのレンタルスペース運営
13選とあなたの「強み」を掛け合わせる
以上が鉄板スモールビジネス13選です。
ここからは、これらの13種類と、先ほど書き出したあなたの「強み」を交互に見ながら、「こういうのはどうだろう?」とアイデアをいくつか考えてみてください。
この段階では「【ターゲット層】に対して、【サービス内容】を提供する」という形で整理するのがおすすめです。まだ自信がなくても構いませんし、価格設定や営業手法といった詳細を詰める必要もありません。
たとえば、こんな感じです。
- 「知識:YouTube運営に詳しい」×「繋がり:飲食業界の知り合いが多い」×「マーケティング支援・BPO」 → 【飲食業界でYouTubeをやりたい人や企業】に対して、【企画・撮影・編集・投稿・分析まで一通りやりますよ】を提供する
- 「知識:最新のAIを使った開発ができる」×「特性:人に分かりやすく説明するのが得意」×「教育・スクール」 → 【非エンジニアのビジネスパーソン】に対して、【AIを駆使した開発を短期集中で覚えるスクール】を提供する
- 「知識:英語が話せる」×「興味:たくさんの外国人と友達になりたい」×「人材サービス」 → 【日本で働きたい外国人】に対して、【外国人を採用したい日本企業とのマッチング】を提供する
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4. すでに儲かっている企業を調べる
「これはどうかな?」と思えるアイデアが出てきたら、次は「先行者調査」に進みましょう。
先行者とは、あなたが今考えているビジネスに似たことをすでにやっている人や企業のことです。まずはそういった企業の存在を見つけるところから始めます。
先行者がいない場合は要注意
もし先行者が全く見つからない場合、そのビジネスはニーズがない可能性が非常に高いです。別のアイデアを考えましょう。
スタートアップ起業なら「今誰もやっていないこと」に挑戦する価値がありますが、スモールビジネス起業は違います。「誰かがやっていて、儲かることが証明されていること」こそ選択すべきなのです。
先行者が儲かっているかを調べる
先行者を見つけたら、その企業が儲かっているのかを調べましょう。先行者がいるのに儲かっていなさそうな場合は、あなたも儲からない可能性が高いです。この段階では差別化を考える必要はありません。素直に別のアイデアに切り替えましょう。
「誰に、何を、どうやって、いくらで」を明らかにする
儲かっている先行者がいたら、その企業が「誰に、何を、どうやって、いくらで売っているのか」を徹底的に調べましょう。
調査方法はたくさんあります。以下のような手段を縦横無尽に使ってください。
- Google検索やAIでリサーチする
- 書籍を読む
- SNSを調べる
- クラウドソーシングで探す
- 商品サイトやコーポレートサイトを見る
- 決算資料を見る
- バフェットコードを見る
- Wikipediaを見る
- 商工リサーチや帝国データバンクを使う
- 業界レポートや専門誌を見る
- 知人に聞く
- スポットコンサルを受ける
- 実際に商品を購入する
- 興味があるフリをして営業を受けてみる
- レビューを見る
先行者が見つかり、儲かっていることがわかり、「誰に、何を、どうやって、いくらで売っているのか」も掴めたら――おめでとうございます。その事業は、次のフェーズに進むだけの価値があります。
もしここまでのどこかで行き詰まってしまったら、納得のいく段階まで戻ってやり直しましょう。本気で調査をしたなら、あなたには新たな「知識」や「繋がり」が増えているかもしれません。それを活かして、もう一度アイデアを練り直せばいいのです。
販売フェーズ
1. ターゲットと商談する
あなたはすでに「誰に、何を、どうやって、いくらで売るべきか」を知っています。では、実際に売ってみましょう。
ここで大事なのは、商品やサービスを作る前に売るということです。
まずは、儲かっている先行者と同じようなターゲットと商談をしましょう。商談とは、対面やオンライン会議で、相手の今の課題や悩み、過去の購買行動についてヒアリングした上で、「私はこういうものを○○円で提供できますが、買いませんか?」と打診する活動のことです。
大抵の場合、最初から顧客リストがあるわけではないので、ターゲットに出会うこと自体があの手この手でがんばるしかない部分ではあります。
なぜ「作る前に売る」のか。それは、この段階でも予想外にうまくいかなかったり、ターゲットから思わぬ反応や要望をもらったりすることがあるからです。それらの声を取り入れながら、サービス内容も売り方も柔軟に変化させていきます。そうやって、ビジネスの形を実戦の中で磨いていくのです。
最初は信頼も実績もないので、苦労するはずです。それでも売る努力を続けましょう。やっていくうちに「この点は評価されるぞ」「この機能は興味なさそうだな」「こういう人は反応がいいな」といった学びが蓄積されていきます。PDCAを回しながら、売れるまでがんばりましょう。
2. 売る→全力で価値提供→大満足を勝ち取る
1件でも売れたら、次にやるべきことはひとつです。全力で価値提供することです。
割に合わなくても構いません。とにかくお客さんに「買ってよかった!」と心から思わせるのです。相手の期待を遥かに超えるつもりで取り組んでください。
そしてその調子で2件目にも3件目にも、採算度外視で尽くしましょう。サービスを提供する中で学べることはたくさんありますし、大満足してもらうことで、これからの営業がぐっと楽になります。
大満足してもらえた顧客には、こう聞いてみてください。
「○○さんのまわりに、我々がお力になれそうな会社さんはおりませんか?」
そうやって紹介をもらい、顧客を広げていくのです。
3. 法人設立を検討する
ここまで来て、ようやく法人設立を検討しても良い段階です。
ただし注意点があります。特別な理由がないのに豪華なオフィスを借りたり、正社員を雇ったりするのは禁物です。スモールビジネス経営において、固定費は少ないほど正義だと思ってください。
もし人手が足りないと感じるなら、業務委託契約で副業人材を受け入れましょう。月5万円でも、あなたの雑務を巻き取ってもらうだけで、かなり楽になるはずです。
仕組み化フェーズ
1. 提供の仕組み化を進める
数社、数人のお客さんに大満足を提供できたら、並行して仕組み化を進めていきましょう。仕組み化を進めることで、売上も利益率も向上させていくことができます。
まずは「提供の仕組み化」からです。これまでにお客さんに価値提供をしてきた中で、「この作業は毎回やってるな」「この文面は使い回せるな」という部分がたくさんあるはずです。そういうところから手を付けていきます。
仕組み化の最初の一歩は**「マニュアル化」**です。マニュアル化のメリットは絶大で、大きく4つあります。
まず、当然ながら作業のミスが減ります。そして地味に大きいのが、「これどうやるんだっけ?」「この情報どこにあるんだっけ?」という無駄な思考をしなくて済むようになることです。さらに「この作業、そろそろ誰かにやってもらいたいな」と思った時は、そのマニュアルを渡すだけでOKです。業務改善を考える時も、マニュアルがあるおかげでルーティンワークが可視化されているのでやりやすいです。
やれることはマニュアル化だけではありません。自動化、簡略化、外注化、流用、統合など、ルーティン作業はどんどん仕組みにしていきましょう。
2. 売れる仕組み化を進める
提供の仕組み化が進んできたら、あなたは案件を効率的に対応できるようになってきているはずです。次は案件(顧客)を増やす仕組みも作っていきましょう。
これにも無限の手段がありますが、例えば以下のようなものが考えられます。
リファラル(紹介)の仕組み化。 BtoBであれば「納品後のミーティングで紹介の依頼をする」、BtoCであれば「友人紹介クーポンを提供する」など、お客さんが別のお客さんを呼ぶ仕組みを作ります。
SNSなどでの発信。 顧客層が見ているSNSを選んで、価値ある情報を発信することで新たなお客さん候補に出会う仕組みを作ります。
セミナーの定期開催。 顧客層が興味を持ちそうなテーマでセミナーを開催し、見込み顧客と接点を作ります。
展開フェーズ
仕組み化が進み、あなたのビジネスが安定的に利益を出せるようになったら、次は「その先」を考えるタイミングです。ここには3つのルートがあります。どれが正解ということはなく、あなたの価値観に最も合うものを選んでください。
ルートA:ビッグビジネスを目指す
今の事業に情熱があり「まだまだこんなもんじゃない」と思えるなら、この道です。スモールビジネスで築いた仕組みを、より大きなスケールで回す挑戦です。
やることは明確です。前のフェーズで作った「提供の仕組み」と「売れる仕組み」を、さらに高い次元に押し上げ続けます。既存商材のアップセル商品を開発します。新たなターゲット層に舵を切ります。隣接領域で新規事業を始めます。
優秀な人材の採用が必要になるでしょう。オフィスも拡張するかもしれません。固定費は上がりますが、それは新たな景色を見るためのリスクテイクです。
その先には、上場、企業価値100億円超え、スモールビジネスの枠を超えた世界があります。
ただし注意点があります。ビッグビジネスを目指すとしても、根本は変わりません。顧客に価値提供して大満足を勝ち取り、それを広げます。やることはそれをより大きな単位でやるだけです。フォームを崩しすぎないようにしましょう。
ルートB:業務から離れる
「事業は持ち続けたいけど、もっと楽になりたい」と感じるなら、この道です。仕組み化をさらに徹底し、あなたがいなくても事業が回る状態を目指します。
まず、自分が今何に時間を使っているかをリストアップします。「これは本当に自分でなければできないか?」と一つずつ問いかけます。自動化できるものは徹底的に自動化します。それ以外はマニュアルを磨き、信頼できるメンバーに完全委任します。
最終ゴールは、あなたが不在でも事業が成長し続ける自律的な組織です。メンバー自身がマニュアルを改善し、新たな挑戦を始めるような状態です。
その先に手に入るのは、時間の自由です。世界中を旅しながら月1回だけ会議に出る。諦めていた趣味に没頭する。あるいは、新しいスモールビジネスをゼロから立ち上げる。「やっぱり戻りたい」と思ったらいつでも戻れますし、その1年後に「やっぱりビッグビジネスを目指す」と言う自由もあります。
注意点もあります。自分の稼働を減らしたら売上が落ちた、というのは仕組み化が不完全なサインです。その場合はもう一度現場に戻り、自分の「暗黙知」をマニュアルに落とし込むところからやり直しましょう。また、お金の管理を一人に丸投げしないことです。不正などのリスクがあります。
ルートC:会社を売却する
一度「利益確定」して、まとまった資産を手に新たな人生を始めたいなら、この道です。特に「利益率が高い」「仕組み化されている」「少人数で回る」ビジネスは、買い手にとって非常に魅力的です。
まず売却条件を整理します。売却額の相場は年間営業利益の2〜5倍が目安です。事業譲渡というやり方もありますが、特に理由がなければ税制面で有利な株式譲渡がおすすめです。
買い手を探す方法としては、知人経営者に直接アプローチしてもいいですし、M&Aクラウド、バトンズ、M&A総合研究所などの仲介会社に複数登録するのが定石です。
交渉では買収価格だけでなく、ロックアップ期間(あなたがいつまで事業に関与するか)、その間の報酬、責任範囲なども詰めることになります。M&A経験のある先輩経営者のアドバイスを参考にするとトラブルになりにくいです。
売却が完了すると、口座にはこれまで見たことのない額のキャッシュが入ります。ロックアップ期間中は買収先の大きなリソースを使って事業を伸ばす経験が積めますし、終了後は完全に自由です。個人的にオススメしたいのは「これまでの経験を書籍にまとめて出版する」という選択です。あなたの実体験は、後輩経営者にとって間違いなく参考になるはずです。
注意点として、M&A交渉は長く精神を消耗します。疲れて本来の価値より安く売ってしまうケースがあります。提示額に疑問を感じたら焦らないことです。複数の仲介会社に相談し、客観的な市場価値を把握しましょう。属人性を減らし、財務をきれいにしておくことも売却の前提条件です。
おわりに
ここまで読んでくださった方は、スモールビジネスの「全体像」がかなり掴めたはずです。
ただ、やり方を知っただけでは実行できるとは限りません。
「自分の場合、どんなビジネスが合うのか」「実際にやった人はどんな壁にぶつかったのか」「最初の一歩は具体的に何をすればいいのか」
こうした問いに答えてくれるのは、実際にやった人のリアルな事例だけです。
Biz libraryでは、スモールビジネスを実践している経営者へのインタビュー記事を毎月7本公開しています。売上規模、業種、始め方、つまずいたポイントまで、すべて具体的に聞いています。
さらに、同じ志を持つ仲間と繋がれるイベントや、実行を後押しするワークショップも用意しています。
気になった方は、一度中を見てみてください。